たからもの

瑞希

 大切な大切な宝物。
ひとつひとつ大事にしまっていく。
 私だけの宝箱へ。

 ひとつはあなたのその瞳。
どこまでも美しく澄んでいて、大好きだったあなたの瞳。
決して私だけを見つめてくれる事のなかったその瞳。

 ひとつはあなたのそのくちびる。
低く、甘い声で、無数の愛の言葉を紡ぎ出したあなたのくちびる。 
同じ数だけの嘘と罵りを私に投げつけたそのくちびる。

 ひとつはあなたのその腕。
たくましくて暖かい、たよりがいのあるあなたの腕。
他のたくさんの女を抱きしめたその腕。

 ひとつはあなたのその心臓。
温かい血潮をあなたの全身に送っていたあなたの心臓。
私の心を引き裂く時も、いつもと変わらず脈打っていたその心臓。

限りない愛と憎しみをくれたあなたのすべて。
 いま、初めて私だけのものになった。
 もう、失われる時を恐れる事もない。
 
 大切な大切な宝物。 
  私だけのあなた。 


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