The First Adventure.

いづみ

「ほら行こうぜ、ティム!」
「…やっぱり止めようよ、僕たちじゃ無理だよ。」
「今さら何を言ってんだよ、昨日あれだけ相談しただろ!ほら早く行かないと見つかっちまうぞ。」
「そうだけど…やっぱりだめだよ、自警団の人に任せようよ。」
「だから、それは無理だって言っただろ?村長が冒険者を呼ぶって言ってたのをオレは聞いたんだから!自警団のヤツラは、自分で戦う気なんかないんだ。」
「…ねえ、昨日から気になってたんだけど、なんでラスは村長さんがそう言ったのを知ってるわけ?」
「う…。」
「ねえ。」
「―ああもうっ!そんなことはどうでもいいだろ!とにかくオレははっきりと聞いたんだ、間違いないって!」
「なら、いいけど…じゃあ冒険者の人たちに任せればいいのに。」
「何言ってるんだよ、冒険者に仕事を頼むといっぱいお金がかかるんだぞ!」
「いっぱいって、どれくらい?」
「それはオレもよく知らないけど…とにかくたくさんだよ。だから、そんなお金を払ったら、村のお金がなくなっちまうじゃないか!」
「…うん。」
「そうだから、オレたちが冒険者の代わりに行くんだよ!」
「でも、自警団の人たちが行かないぐらいの強い魔物だったらどうするの?僕たちじゃ絶対に勝てないよ!」
「大丈夫だって、オレたちが負けるわけあるもんか!セニオじいさんだって言ってたんだぜ!」
「…ホント?」
「ああ、『この腕なら、この辺の魔物にだって負けはしないぞ。』って。」
「…でも、ファーイ先生は『魔物は危険だから、見かけたら絶対にすぐに村に戻って自警団の人に報告するんだよ。』って言ってたよ。」
「それは、お前が弱いからだろ。オレは大丈夫だって言われたもんな。」
「そ、そんなことないもん!」
「じゃ、行こうぜ。弱くないんだろ?」
「そ、そうだけど…でも…。」
「…なんだよ、結局そう言って行かない気だな!このいくじなし!」
「ち、違うよっ!」
「違うもんか!ティムのいくじなし、お前なんかもう知らないからな!」
「ええっ?」
「弱虫なんか絶交してやる!もうティムなんか友達じゃないからな!」
「や、やだよ!絶交するなんて言わないでよっ!」
「冒険にも行かないような弱虫なんか知るもんか!」
「そんなぁ…。」
「じゃあな。」
「あ、ま、待ってよ!」
「ふん!」
「…わ、分かったよ!行くよ、僕も一緒に行くよ!」
「…ほんとか?」
「行くよ!だから絶交なんてしないでよ!」
「ほんとにほんとだな?」
「ほんとにほんとだよ!今から行くから、そこで待っててよ!置いてったらやだよっ!」
「じゃあ早くしろよ!遅れたら置いてってやるからな。」
「待ってよー!」


それは、この世界ならどこにでもあるような一つの村でのお話。

ごく普通だったこの村に、あまり普通でないような出来事が起こり始めたのはほんの九日前のことだった。
ある日突然、一人の農夫の畑が荒らされた。次の日はその隣の畑も荒らされた。この時は誰もが村のいたずら者の仕業だと考えていた。
ところが犯人は見つからず、しかもその二日後に村の塀の一部が壊れているのが見つかった。
そしてこの次の日、鶏が一羽いなくなった。しかも壊れた塀のあたりに見慣れぬ足跡のようなものまで見つかったのだ。
村人が不安に思い始める中で、自警団が近くの森を調べてみたが何も見つからなかった。仕方なく壊れた塀だけ直しておいて様子を見ることになった。
 それから二日間は何も起こらず、多くの者が安心をした。
ところが。その翌日、とうとう牛が一頭いなくなったのだ。慌てて自警団が調べると直したはずの塀が乱暴に壊されていた。そして、森の中で乱暴に食い散らかされた牛の死体が見つかった。
さすがに事態を重く見た村長は、すぐに冒険者を呼ぶことを決めた。そして早速隣町に使いを向かわせた。これで遅くとも明後日には冒険者が到着するはずだ。
これが、つい昨日までの村での出来事だった。

ラス、本名はラッシュ・フォールセ。10歳の自称見習い剣士。自称とはいえ剣術を習っているのは本当である。というのもこの村には引退した元冒険者であるセニオという老人が住んでおり、身に着けた剣術などを自警団に教えて生活していた。ラスはそれを見て、剣術を習おうと6歳の時に自分から頼み込んだのだ。老人もあまりやる気のない自警団だけでは退屈だったのだろうか、熱心にこの少年の指導をした。そのかいあってか、今では自警団の大人に引けを取らないほどの剣術をラスは身に着けていた。
一方のティム。本名はティーミッド・アレルタ。ラスの一つ下、9歳の魔術士見習いである。先ほど名前の出たセニオ老人の妻ファーイも実は元冒険者であり、こちらは魔術士をしていた。今は子供たちに読み書きや様々な知識を教えているが、ティムに魔法の才能があると分かったので彼には特別に魔術士としての指導もしていたのだ。もともと真面目な性格をしていたティムは熱心に学んで、初歩的な魔法ならちゃんと使えるようになっていた。
この二人は家が近いこともあって幼なじみだった。今では大親友だ。
そして。前々から子ども扱いされて自警団に入れてもらえないことに腹を立てていたラスだったが、この異変を知って、何とか事件を解決して自分の力を認めてほしいと思うようになった。しかしそのきっかけがなかなかつかめずにいた。
転機が訪れたのはつい昨日、母親とけんかして家を飛び出したことが始まりだった。とりあえず隠れようと村長の家の庭に入り込んだラスは、まったくの偶然だったが村長が隣町への使いを頼んでいるところを見てしまったのだ。
やるなら今しかない!そう考えたラスはすぐにティムの家に行き、冒険者が来る前に自分たちで事件を解決してしまおうと言った。さすがに一人だと少々不安だったので幼なじみのティムも誘うことにしたのだ。ティムが魔術士として勉強していることはもちろん知っていた。その力量は大人から見ればまだまだ小さいものでしかなかったが、まだ他の魔術士をよく知らないラスから見ればその腕前は十分一人前に見えるものだった。
ティムももちろん事件のことは知っていた。だから最初は嫌がっていたティムだったが、ラスの熱心な説得(と少々の脅し)によって結局一緒に冒険に行くことを決めた。
これが、昨日までの二人の間での出来事だった。


 ラスがティムの家の裏で待っていると、ようやく身支度を整えたティムがやってきた。とはいえ二人はまだ村の普通の子供とあまり変わらない。もちろんちゃんとした鎧やローブを持っているはずもなく、せいぜい丈夫そうな服に遠出用のマントとブーツ、後は水筒や傷薬程度しか身に着けていない。唯一違うのはそれぞれが持っている武器だ。二人とも既に、訓練とはいえそれなりに実際に使えるような装備をもらっていた。ラスが持つのは、セニオが昔予備の武器として使っていた片手剣。小振りとはいえさすがにまだ両手で使うことの方が多かったが、実用性は十分だった。そしてティムが持つのは、ファーイから与えられた専用の杖だ。魔法の訓練には本人に合った杖を使うのが一番いいということで、あまり高価なものではないがわざわざファーイが買い与えたものだった。
 ティムは急いで駆けて来ると、両手でしっかりとその杖を握り締めて言った。
「準備できたよ!」
 その顔にはさすがに緊張の色がある。慌てて走ってきたせいか、それともこれからのことに興奮しているのか頬がわずかに紅潮していた。
 それを迎えるラスの眼も輝いていた。待ちに待っていた冒険、それがいよいよ始まろうとしているのだ。胸が弾まないわけがない。
「よし、じゃあ行くぞ!」
 ラスがはっきりと答えると、ティムも大きくうなづいた。そしてそれを合図とするかのように二人は歩き始めた。

 朝の早い農作業はとっくに始まっているが、まだ店を開くには少しだけ早い時間帯。村の中を歩く人の姿はそれほど多くはなかった。
 意気揚々と前を歩くラスと、その後ろをどきどきしながらついて行くティム。
「ねえ、ラス。」
 最初に声をかけたのはティムの方だった。
「なんだよ、今さら帰るって言ってもダメだからな。」
 ちょっとだけ口を尖らせて、振り返りはしないままラスが答える。
「違うよ!そうじゃなくて、魔物についての話とかは何か知らないかって思ったの。」
 ティムの声は少し前までの不安げさがなくなって、ラスに負けず劣らずはっきりしたものになっていた。どうやら決心が完全についたらしい。
「知らないよ。大丈夫、魔物なんかやっつけちまえばいいんだから。」
「そうだけど、それでも先に相手の正体が分かっていた方がいいでしょ。」
 舗装などはされていない乾いた土の道、その上をちょっとだけ走ってティムはラスの横に並んだ。
「確かに、そうだよな。でもオレは何も知らないぞ。」
「村長さんの話の中には何かなかったの?」
 尋ねられて、腕を組んでラスは考え込んだ。
「うーん…よく覚えてないや。」
「そんなぁ。」
 ティムががっかりした顔を見せる。だが、その表情はすぐさま明るいものに変わった。
「じゃあさ、自警団の人に聞いてみればいいじゃん!きっと何か知ってるよ。」
「バカ!そんなことしたら、あいつらにバレるに決まってるだろ!」
 すかさずラスが反論する。自分の考えをすぐさまバカにされて、ティムは膨れっ面をした。
「…ばかってなんだよ!覚えてないラスの方がばかじゃないか!」
 それまで歩いていた足を止めて、二人が真っ向から向かい合った。
「なんだと、このバカ!」
「ばかはそっちの方だ!」
「バーカ!」
「ばーか!」
「こら、お前らこんなところで何やっとるんだ!」
 突然、頭の上から声が聞こえてきた。
 二人が見上げると、知り合いの村のおじさんが二人を見下ろしていた。
「道の真ん中で、お前ら何喧嘩しとるんだ。」
「だって、ラスが僕のことをばかにしたから…」
「なんだよ、そっちだってオレのことをバカにしただろ!」
「ええ加減にせんかっ!」
 その一喝で、途端に二人は口をつぐんだ。思わず少し身をすくめる。
「…喧嘩は両成敗だ。どっちのせいでもない。」
「だって…。」
「返事は!」
「は、はい!」
 二人は同時に答えていた。それを見て、おじさんは満足そうに笑った。
「よーし。もうお前ら喧嘩すんじゃねえぞ。」
「はーい。」
 ちょっとだけすねた口調でラスは返事をした。ティムも同じように答えた。
 そしてそのまま二人は歩き出そうとした。
「ん、お前ら。ちょっと待てよ。」
 ところがその背後から再び呼び止められた。仕方なく足を止めて振り返る。
「なんだよ、もう喧嘩はしないよ。」
「いや、そうじゃなくてな。お前らそんな格好してどこに行くつもりなんだ?」
 その一言に、二人は反射的に身を強張らせた。
 自分たちがこれからやろうとすることは、絶対に見つかってはいけないということぐらいは二人とも承知している。だからこそまだ早い時間のうちにこうやって出発したのだ。
「え、えっと、その…。」
 何かを答えようとするが、うまい言い訳が出てこなくてティムが口ごもる。
「あ、せ、セニオじいさんがさ、たまには二人とも一緒に訓練しないかって言ったんだよ!」
 慌ててラスが答えた。とっさに思いついたにしては上出来の言い訳だ。
 しかしおじさんは二人をにらむかのように見つめていた。…不安で、口の中が渇きそうになる。
 一瞬の間があって、それからおじさんが口を開いた。
「そうか。それじゃ、頑張れよ。」
 多少怪しいような口ぶりであることは間違いなかったはずだが、このおじさんはまったく気づかなかったらしい。あっさりと信じ込んだみたいで後ろを向いて行ってしまった。
 その姿を見送ったところで、改めて二人はため息をついた。
「まったく、もうちょっと怪しまれないようにごまかせよ。」
「…ごめん。」
 ラスがなじったが、ティムは素直に謝った。そのしょんぼりした姿を見てラスも言った。
「…オレも、さっきは悪かったよ。村長の話を覚えてなかったのはオレの方だし…。」
 どちらともなく、反省して黙り込む。
 だがこの沈黙は数秒と続かなかった。
「とりあえず行こうぜ!ここでのんびりしてたら、また誰かに聞かれるかもしんないし。」
「うん、そうだね!」
 二人は再び顔を上げると、また並んで歩き出した。
 穏やかな日差しがその背を優しく包んでいた。

 壊れた塀は、村の外れの空き家の裏にある。
 念のために辺りをうかがってこっちを見ている人がいないことを確認してから、二人は空き家の庭に入った。『立入禁止』と書かれた看板には目もくれずに、ぐるりと張られたロープをくぐる。
 裏手は空き家の陰になっていて薄暗かった。空気がひんやりとしていて、伸び放題の細い草が一面に生えている。
 その先に壊された塀があった。塀を作っていた木が折られて、無造作に地面に転がっている。
 さらに視線を上げると樹が見えた。塀の向こうはそのまま森に続いている。
「…ホントに、森に入るの?」
 ティムがつぶやいた。その声は、朝よりもなお不安げだ。
 子供たちは『森には入ってはいけない。特に、北側の森は危ないから絶対に入ってはいけない。』と教えられている。二人の前に広がっているのはその“北側の森”だった。
 昼だというのに薄暗い。雑然と生えた木々が視界の先を覆っていて、遠くがぜんぜん見えない。
「あ、当たり前だろ!魔物はこの先にいるに決まってるんだ。森に入らなきゃ退治ができないだろ!」
 声をことさら張り上げてラスが答えた。その威勢のいい声は、自分に言い聞かせているようでもあった。
 この“北側の森”には腕白な子供たちでもめったに入らなかった。ごくまれに、肝だめしとしてほんの入り口の部分に足を踏み入れるだけだ。他の森とどこがどう違うというわけではないのだが、どこか暗くてじめじめしている気がするこの森は子供たちの間でも昔から敬遠されていた。
 ただでさえ怖い“北側の森”、ましてや今回はその向こうにいる得体の知れない魔物を退治しに行くのだ。怖くないわけがない。
「なんだよ、そんなこと言って…もしかして怖いのか?」
 からかうようにラスが言う。言うまでもなく、自分だって本当は少し怖いのだが、ティムの前でそんなことは絶対に見せたくないのでことさら強がってみせているのだ。
「違うよ、そ、そんなことないもん!」
 ティムが激しく首を横に振った。怖いけど、怖いだなんて絶対に言えない。だから違うと答えた。
「じゃ、じゃあ入るぞ。」
 ティムがはっきり違うと答えたので、引っ込みのつかなくなったラスが言った。どちらにせよここでじっとしていたって仕方がない。少し勇気を出して、壊れた塀に近づいた。
「ねえ、先に入ってよ!」
 その後ろからティムの声がした。思わず振り返って答える。
「何言ってるんだよ!い、一緒に行くんだぞ!」
 少し怒ったような声で言った。途端にティムの表情が泣きそうなものになる。
「ええっ?」
「怖くないんだろ!だったら、一緒に入るぞ!」
 そう言ってラスはティムの手を掴んだ。ティムの体が思わず強張る。
「や、やだよ!」
「ほら、やっぱり怖いんだろ!」
「ち、違うけど…そ、そんなこと言って、ラスだって怖いんでしょ!」
「そ、そんなことないぞっ!」
「だったら先に入ってよ!そしたら、後からついていくから。怖くないんでしょ?」
「う…。」
 互いに、次の言葉が出なくなった。目を合わせたまま黙り込む。
 その時風が吹いた。木々が揺れて、がさがさと音を立てる。二人は思わず同時に肩をすくめた。
 音はすぐにやんだ。互いに体の力が抜けて、それから微妙に気まずそうな表情をした。
「じゃ、じゃあ一緒に入るからな。怖くなんかないからな!」
「う、うん。僕だって怖くないもん!」
 お互いの片手を強く握り合い、反対の手ではしっかりと自分の武器を握り締めて、二人は塀の前まで歩み寄った。
「せーの、で行くからな!遅れるなよ。」
「分かってるよ!」
 互いにもう一度にらみあって、それから前を見た。先にあるのはただの森だ。
「…せーのっ!」
 そして、二人は同時に足を一歩踏み出した。
 ―もちろん、森は何事も起こることなく静かなままだった。
 思わず閉じていた目を開けて、それから互いに見合わせて、そして二人はまた笑った。
「―ほら、何ともないだろ!さあ行くぞ!」
「…うん!」
 つないでいた手をそっと離して二人は歩き出した。
 最初の一歩を踏み出したその時から、不思議と怖さはなくなっていた。
 もう一度風が吹いたけれど、二人とももう立ち止まりはしなかった。

 そのままラスはどんどん歩いていった。その後をついてティムも歩く。
 時々、すぐ近くで木ががさりと音を立てることはあったけれど、そこから何かが出てくるということもなくて二人は歩き続けることができた。まだ少しは怖かったけれど、それでも何とか進むことはできた。
二人でだったからかもしれない。一人だったら、森にすら入れなかったかもしれない…口にこそ出さないが互いにそう考えていた。
ところどころまばらに木漏れ日が落ちている以外は、薄暗い森。空気が湿っているような気がして、汗もかいていないのに思わず額を拭った。遠くから何かの鳴き声が小さく聞こえる。
 そしておよそ30分も歩いた頃だろうか、ティムが言った。
「ねえラス、ホントにこっちで合ってるの?」
 今まではまっすぐラスの後について歩いてきたけれど、ちょっとだけ心配になってきて尋ねてみた。
 ラスが足を止めて振り返った。
「知らないよ。でも、奥に行けば絶対に見つかるって!」
 自信たっぷりに、そう答えを返した。
「ええっ!そんな、こっちじゃなくて別の場所にいたらどうするの?」
 驚いて、少し大きな声でティムが言う。ラスはその言葉にちょっとだけうろたえたが、すぐに元に戻って言い返した。
「大丈夫だよっ!それに、オレたちがこうやって歩いてたら、きっと魔物も気づいて向こうからやってくるから問題はないぞ。」
 言っていることはともかく、その堂々とした言い方についティムはうなづいてしまった。
「…分かったよ。絶対に、大丈夫だよね?」
「大丈夫!」
 内心、ティムの指摘に少し不安になったラスだったが、そんなことはおくびにも出さず答えてみせた。
 納得したらしくティムの顔が少し明るくなる。
「じゃ、早く行こう。」
 ちょっとだけ積極的なことを言って、ティムはラスを見た。
「分かってるよ!お前こそ、遅れんなよ。はぐれても知らないからな。」
 そう言うやいなや、ラスは早足で奥へと歩き出した。慌ててティムもそれを追いかけた。

 そして、さらに一時間。
 時折不安げな言葉を口にするティムを、ラスはその都度なだめたり時には怒ったりしながら進んできた。
「…ねぇ、本当に、こっちで合ってるんだよね?」
 何度目になるか分からないけれど、ラスからみればすっかり聞き飽きた言葉をまたティムが口にした。
「うるさいなぁ、大丈夫だって言ってるだろ!」
 声を荒げてラスが返事をした。ラス自身だって、不安じゃないわけじゃないのだ。口では大丈夫と言いつつも確信があるわけじゃない。時計なんか持ってないのでどれくらい自分たちが歩いてきたかも分からないが、相当な時間が経っているはずなのだ。本職の冒険者ならともかく、少なくとも二人にとっては、何の収穫もなかったこの一時間半は長すぎると言えた。
「だって、こんなに奥まで来たのに、魔物なんかいないじゃないか!」
 怒ったような声でティムが言う。
「いるさ!それとも、ここまで来て何もしないで戻るって言うのか?そんなことできるか!」
 本人が気にしているところをつつかれて腹の立たないわけがない。はっきりと不機嫌さをあらわにして、ラスも言い返した。
「でも…。」
 小さな声が返ってくる。振り返ると、ティムが立ち止まって唇を噛んでいた。
 少しだけ、言い過ぎたかもしれない。そんな気がしたがだからといって腹立ちが収まるわけでもない。
「分かったよ、勝手にしろ!」
 苛立ちをどうすることもできなくて、むしゃくしゃしたままラスは歩き出した。
 今度は返事が来なかった。そのことに余計に腹が立ったけれど、どうしようもない。
 目の前の低い木を乱暴に掻き分けた。

「―ギャ!」
 その先には、見知らぬものがいた。
「う、うわっ!」
 ラスは思わず数歩後ずさった。
 同時に、その見知らぬものは木の陰から立ち上がった。
 大きさはラスたちとあまり変わらなかったし人のような形もしていたが、姿が全然違っていた。赤茶けた肌はざらざらしているように見えて、細かないぼみたいなものがいっぱい付いている。口が大きくて、黄色っぽい牙が生えていた。やたらと長い手には錆びた刀のようなものを持っている。
「で、出たっ!魔物だよっ!」
 ティムもその姿を見て声を上げた。だけど語尾が震えている。
 現れた見知らぬもの…そう、魔物は、目の前に立つラスをにらんだ。
「ギャ、グギャグ、ガグ?」
 何だかよく分からないうなり声みたいなことを言ってくる。
「ティム、何て言ってるんだよ!」
「分かんないよ、そんなの!」
 ラスは後ろに立つティムに慌てて尋ねたが、返ってきた答えは全然役に立たないものだった。
「ギャギャギ…ガアッ!」
 そして、魔物はいきなり目の前のラスに向けて手にした刀を振りかざした。
「うわぁっ!」
 とっさにかわして横に転がる。
 刃が、さっきまで立っていた地面に叩きつけられた。
 その様子を見てようやくラスも状況が把握できた。現れたこの見知らぬものはティムの言う通り魔物で、そのうえ自分たちを狙っているということだ。
 そこまで確認して、ラスもすぐに腰に下げていた剣を抜いた。
「ティム、こいつがあの魔物だよなっ!やっつけるぞ!」
「う、うん!」
 ティムに一声呼びかけて、そのままラスは勢いよく斬りかかった。
「やあああっ!」
 頭を狙って大きく振り下ろした剣はよけられてしまった。だけど、何とか腕をかすめた。
「グギャアアッ!」
 魔物が叫びを上げる。そして黒色の血のようなものが飛んだ。
 しかし魔物は再びラスをにらみつけてもう一度刀を振った。
 慌てて自分の剣で受ける。鋭い音が響いた。
「何やってるんだよ、ティム!」
 手にした剣に力を込めながら、さっきから何もしていない仲間に向かって声を上げる。
「わ、わかってるよ!ええと…!」
 答えて、ティムは呪文を唱えた。
 振りかざした杖の先に魔力が集まる。魔法の完成とともに、その力は解き放たれた。
 魔物の足元の地面が震える。異変に気づいた魔物は足を下げようとしたが、それより先に大地が動いた。土そのものが腕のように細く持ち上がり、魔物の両足を掴んだのだ。
「―ギャギャッ?」
 魔物は力任せに振りほどこうとしたが、土はまるで固まったかのように動きはしなかった。
 その様子に気づいてラスは一歩下がった。足を取られたまま競り合っていた剣を引かれて、魔物が体のバランスを崩した。前のめりになる。
「今だっ!」
 ラスはすかさずむき出しになった後頭部めがけて剣を振り上げた。
 だが、魔物の足の戒めが振りほどかれる方が一瞬早かった。
「―うわぁ!」
 魔法を壊されて、反動がティムを襲った。腕に重い痛みが走って思わず杖を取り落とす。
 そして魔物はそのまま姿勢を戻した。振り下ろされたラスの刃は頭をそれてその肩を切り裂く。
「ギャアッ!」
 魔物が痛みに叫んだ。暴れるようにでたらめに腕を振る。
 とどめの一撃のつもりで攻撃をして無防備になっていたラスを、その爪が捕らえる。腕を裂かれ、血が飛んだ。
「うわあっ!」
 痛みにラスも叫びを上げた。だが、何とか後ずさる。
「な、何やってるんだよティムっ!」
 痛みに半ば悲鳴に近くなりながらも、ティムに声をかけた。しかし振り向くほどの余裕はない。
「ご、ごめん…!」
 答えるティムの声も震えていた。杖も拾わずに、腕の痛みにうずくまっていた。
 その先で、魔物が完全に立ち上がった。血走った目でラスを見て再び刀を振り回し始めた。
 かろうじてかわすが、なかなか反撃の糸口が掴めない。痛みで頭がくらくらしてくる。ラスは必死になって刀をよけていた。
 一方、後ろのティムも顔を上げた。目の前ではラスと魔物が戦っている。だけど、ラスの方が押され気味なのが分かった。しかもその腕から血が流れている。
 手はまだ痛かったけど、そんなこと言ってられない。ずきずきとうずく手でティムは杖を拾い上げた。頑張って正面にかざす。
「―!」
 自分の杖をしっかりと握り締め、精一杯の力で魔法を放った。
 杖の先端が勢いよく燃え上がり、次の瞬間それは大きな弾となった。そのまま魔物めがけて飛んでいく。
「ギャアアアッ!」
 魔物が悲鳴のような叫びを上げた。炎の弾丸をその身に受けて、全身が燃え上がった。攻撃の手も止めてその場でのた打ち回る。
 ラスは巻き添えにならないようもう一歩下がった。そして、剣を握り直す。
「―くたばれえっ!」
 暴れる魔物の頭を狙って、全力で剣を振った。
 刃は、狙い違わずにその頭を叩き割った。

 ラスの目の前で、燃える魔物は地面に倒れた。そのままぴくりとも動かなくなる。
「…やった。」
 思わず口にした。口にして、改めてその事が分かった。荒い呼吸が落ち着くにつれてじわじわと実感がわいてくる。
「やった、やったぞ!魔物を倒したんだ!やったーっ!」
感極まって、喜びのあまりバンザイをする。その拍子に、腕に鋭い痛みが走った。
「―ってて!」
 慌てて反対の手で押さえる。今までは無我夢中で気づかなかったけれど、よく見ると腕が切られて血が流れていた。まだ止まってない。
「ラス、大丈夫っ!」
 座り込んだラスの元にティムが駆け寄ってきた。その顔はひどく汗をかいていて、こちらも息が荒い。
「だ、大丈夫だってこんな怪我!…いててて。」
 強がってみせるが、痛いことには変わりがなかった。再びうずくまる。
 その様子にティムの顔がまた泣きそうになった。が、何かを思い出したのか慌てて自分の荷物をあさりだした。
 数秒後、傷薬と包帯が出てきた。
「今、包帯を巻くからね!」
 ティムは魔術士として初歩の魔法しか学んでいないから、神官の使うような治癒の魔法は使えなかった。だけど簡単な応急手当ぐらいは習っていた。
 とりあえず袖をまくりあげて傷薬を傷口に塗る。
「痛っ!」
「ご、ごめん!でも我慢してっ!」
 ラスが痛がるのにも構わず、傷薬をそのまますり込む。そして包帯を幾重にも巻きつけ、結んだ。
「できたよ。これで、大丈夫だと思う…。」
 そこまで言って、緊張の糸が切れたのかとうとうティムは座り込んで泣き出してしまった。その様子に慌ててラスが言う。
「ば、バカ!何泣いてるんだよっ!オレたちでちゃんと魔物はやっつけただろ?」
「だって、ラスが怪我したし、それに怖かったし…!」
 しゃくり上げながら、ティムが答えた。それを聞いてラスがちょっと口を尖らせる。
「何だよ、こんな怪我、すぐ治るよ!それに魔物はもうやっつけたんだ、怖いことなんかあるもんか!」
 きっぱりと答えてやった。すると、ティムがちょっと顔を上げた。
「…ほんと?」
「ああ、ホントだ!」
 力強く答えて、そしてそのままティムの髪の毛をわしづかみにしてぐしゃぐしゃにしてやった。
「や、やめてよっ!」
「お前みたいな泣き虫なんかこうしてやるっ!」
 二人の声は、静かな森の中に明るく響き渡った。

 ―ガサリ。
 その時、奇妙な音がした。
 思わず二人は黙り込む。
「ねぇ、今の音、何?」
「し、知らないけど…もう魔物はやっつけたんだ、怖くなんかないからなっ!」
 そう言いながらも、ラスは転がったままの自分の剣を握り締めた。そして立ち上がる。
 遠くの方で動く影が見えた。それはすごい勢いでこちらに向かってきていた。目を凝らしたら、ようやく何か分かった。
「あ、あれは…。」
 そのまま絶句したラスに、慌ててティムも立ち上がった。そしてその先にあるものをはっきりと見た。
 次の瞬間、その目が驚きと恐怖で見開かれる。
「―魔物だあっ!」
 叫びはほとんど悲鳴のようだった。
「う、うるさいっ!戦うぞ!」
 気丈にもそう言って、ラスは自分の剣を構えた。
「なんで、魔物はもういないって言ったじゃん!」
 涙声でティムはラスに訴えた。
「知るかよ、仲間がいたんだろ!早くお前も魔法の準備をしろよっ!」
 そう答えてラスは正面を見つめた。
 向こうから、さっき戦った魔物が駆けてくる。その数は―4匹。
「無理だよ、さっきだってあんなに強かったのに、こんな数がいたら絶対に勝てないよ!逃げようよっ!」
 ティムはラスの腕にすがりついた。それを振りほどいてラスがもう一度答えた。
「見つかったんだからもう逃げられないんだぞっ!戦わなきゃいけないんだ!」
「そんな、無理だよ!」
「そんなこと言ってたらやられるぞ!ここで死ぬかもしれないんだぞっ!」
 そこまで叫んでラスは唇を噛んだ。さっきは相手が1匹だったから何とか戦えた。だけど、今度は4匹もいる。どうすれば…。
 考えているうちにどうしようもなく怖くなってきたから、考えるのをやめた。とにかく戦うしかない。
 ラスは自分の剣を握り締めた。隣では、ようやくティムもその杖を構えていた。それを見て少しだけ怖さがなくなった気がした。
「行けっ、ティム!」
「わああっ!―!」
 ティムも必死になって、呪文を叫んだ。杖の先で風がうなる。

 その瞬間、魔物たちを光が包んだ。

 ―何が起こったのか、よく分からなかった。
 とにかく目の前が急にまぶしく光った。
「あたしはあいつらを仕留める!子供は任せたわよっ!」
 女の人の声がして、自分たちのすぐ横を駆け抜けて行った。
 そして、自分たちの肩が叩かれた。
 振り返るとそこには見知らぬ人が二人いた。
「二人とも、大丈夫かい?」
「怪我はない?」
 言葉をかけられて、自分たちを助けに来てくれたのだと分かって…思わず抱きついてしまった。
「う…うわあああっ!」
 怖くて、苦しくて、そして安心して。
 気がついたら泣き出していた。

 ひとしきり泣いたところで、ラスは自分の頭を撫でる手に気づいた。
「もう大丈夫よ、二人ともよく頑張ったわね。」
 優しい、さっき聞こえたのとは別の女の人の声だった。
「…ご、ごめんなさい…。」
 ラスは体を起こして、目をこすった。まだ少ししゃくり上げている。
「謝らなくてもいいわ。謝るのなら、村の人にきちんと謝るのよ。」
 そう言われて顔を上げた。ラスの前には、白い服を身に着けた女の人が立っていた。
 慌てて辺りを見回す。ティムは、黒い服を着た人の所でまだ泣いていた。魔物の方を見ると、そこには魔物の死体があってその前に鎧を身に着けた女の人が立っていた。
 だんだん、分かってきた。
「…お姉さんたち、もしかして、冒険者の人?」
 ラスがそう尋ねると、目の前の女の人は微笑んで答えた。
「ええ、そうよ。村長さんに頼まれて、魔物退治に来たの。」
「そうなんだ…。」
 それを聞いてようやくラスは完全に状況を理解した。危ないところで、この冒険者たちが自分たちを助けてくれたのだ。
 そこまで分かって、さっきまでの怖さが戻ってきた。もし、この人たちが来なかったら自分たちはどうなっていたのだろうか。
「…ごめんなさいっ!」
 もう一度そう言って、またラスは泣き出した。
 女の人は何も言わずに、ただその体を優しく抱きしめた。

 連れ戻された二人を待っていたのは、心配した村人たちだった。
 家族、村長と自警団の人々、先生、それから多くの大人たち。誰もが二人を待っていた。表情はそれぞれに異なっていたが、二人を見るその目はみな安堵の色をしていた。
「ほら、行きなさい。」
 冒険者の人に促されて、ラスとティムは前に出た。
 一度戸惑い、大人たちを見て、それから頭を下げる。
「―し、心配かけてごめんなさい!」
「―もう、こんなことはしませんっ!」
 二人ほぼ同時に謝った。
 ラスは頭が上げられなかった。…大人が、今までどうして自分を自警団に入れてくれなかったのか。なんとなく分かった気がした。
 ティムも同じだった。どうして先生がいつも自分に口うるさかったのか、ようやく分かったように思えた。
 と、その頭に手が置かれた。
「ま、この子たちも今回のことで反省したでしょ。後はしっかり面倒見てやってくださいね。」
 頭を抑える手がなくなったので顔を上げると、目の前にはそれぞれの親がいた。
 背中を押されて、一歩前に出る。
「ラス!また、あんたって子は…!」
「ティム、いつも勝手なことをするなって言ってるだろう!」
 そして、その手を掴まれて…強く抱きしめられた。
 言葉は厳しかったけれど、だけど本当に自分を心配していてくれたことが分かって、二人は何も言えなくなった。
 何も言わずに、また泣き出していた。

 それから、二人はその場で色々と声をかけられた。心配していたり、帰ってきたことを喜んでくれたり、あるいはその無謀な行動をきつく叱ったり。
 たくさん怒られて、自分たちの取った行動がどれだけ悪いことだったのかが分かってくる。みんなに心配をかけて、危ない目にもあって。
 そして反省して、二人はいつしかうつむいていた。
「―あんたたち!」
 その時、さっきの女の人の声がした。
 顔を上げると女の人が他の仲間二人と並んで、彼ら二人を見ていた。顔は笑っている。そしてその手が動いた。
 次の瞬間、二人の前に何かが飛んできた。慌てて受け止める。
 それぞれの手の中には、一枚の銀貨があった。
「よくやったわね。それは、報酬よ。」
「…報酬?」
 意味が分からなくて、ティムが尋ねた。
 女の人はそれを聞いて、にっこりとこう言った。
「あの魔物のうち一匹を倒したのはあんたたちよ。だから、それは冒険者としての報酬。」
「…オレたちが、冒険者?」
 その言葉に、ラスが思わず聞き返す。
「そう。自分たちで事件を解決しようと頑張った。それで、あんたたちは十分冒険者よ。違う?」
「だけど、あんまり危ないことはしちゃだめだよ。冒険者なら自分たちでできる仕事を選ぶんだから。もちろん、その勇気を忘れずにね。」
「あんまり、親や周りの人に迷惑をかけちゃだめよ。…これからも頑張ってね。」
 三人の冒険者は、そう言ってラスたちに笑いかけた。…その表情は、先輩としての厳しさと優しさを持ったものだった。
 そしてその言葉を聞いて、ラスは手にした銀貨を強く握り締めた。大きくうなづいてはっきりと答えた。
「―オレ、頑張るよ!ありがとうっ!」
 その瞳に、確かな決意を宿して。
                           〈終〉



〈あとがきのたぐいのおまけ〉
 …はい、B.L.の短編"The First Adventure"はいかがでしたか?毎度おなじみいづみでっす☆
 今回はNF祭(京大祭)用の原稿ってことで最大10Pという、長編派&すぐに話が長くなるタイプのいづみにしては恐ろしい条件の中で書き上げた原稿でした。…蓋を開けてみれば、ちょうどぎりぎり10P!うわぁ恐ろしい(汗)。まあいい訓練にはなりました。冗長にならないようにするのには、ページ制限ってのはある意味で効果があるかも。しかし最大の課題である描写力不足ってのは…しょ、精進します(冷汗)。
 それから今回は単発で理解してもらえる作品ってことを心がけてみましたが…いかがだったでしょうか?それでもちょっと説明不足だった感はあります。反省。まあいつもと違って職業名に勝手な当て字をつけたり、現れた魔物の正体を書いたりということをしませんでしたが。まあこれくらいはってことで。…つーかそんなことしたら間違いなく規定ページ数をオーバーするってことでやめただけです(笑)。
 ちなみにここだけの話ですが…実はこの話、締め切り間際にわずか二日間で書き上げました(驚)。なんせかのB.L.-1が書き上がってからあんまり日数もなかったし。泉からの原案は少し前に届いてたんだけど、いろいろ忙しくってね…(遠い目)。まあとにかく、普段からかなりの遅筆を自称する私としては結構頑張った方でしょう。多分。その分、完成度が犠牲になったという説もありますが…(殴!)ご、ごめんなさい!言い訳しませんっ、悪いのは全部私なんですぅっ!(泣)
 閑話というか愚痴休題(笑)。そー言えば今回の主役二人はいかがでしたか?いや、日頃こういった少年たちはあまり書いてこなかったので難しくて…。年齢相応に見えていればいいのですが。まあ私の好みは少年よりも年上のお兄さんタイプなんで…っていつまで夢見てるんだこの二十歳め(死)。ちなみに出てきた三人連れの冒険者については…まあお気になさらず。作者の悪戯心の表れってことで(笑)。
 それでは今回はこれにて。またね★

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