うぉ〜ず
おたく戦争(不審部6人リレー) 第3章 (3/6)
「どうした、倒れている暇はないぞっ! 一大事なんだからなっ!」
部長の明朗快活、元気一杯な声が容赦なくふってくる。
「ミノフスキー粒子があにめ部の未来を開拓するっ!」
「却下っ!」
アルミサッシのドアがぱーんと勢い良く開く音とともに、よく通る高い声が飛んできた。顔を上げると、ドアに手をかけたまま、ショートヘアの端麗な美人が部長を睨みつけていた。
うちの副部長である。
「……却下かね、女史」
部長はさみしそうに云うと、ギイと椅子を引っ張って、ことんと座った。
副部長はすたすたと教室に入り、教卓に歩み寄った。その後ろから、短めの柔らかそうな髪をカールさせた。小柄な美少女――うちの副部長である――が、入ってきた。うちの女子部員たちは、いずれ菖蒲か杜若、という佳人揃いなのだ。しかし副部長も会計も、今日はその綺麗な顔をかなり曇らせていた。
部長の莫迦な発言のためばかりとは思えない。
「どうしたんですか女史。憂鬱そうだけど」
「憂鬱なところに行ってきたからよ。生徒会の予算審議」
ねえ、と副部長が会計を振り返る。
部員たちが同情の声をあげた。副部長はそれさえ鬱陶しいというように頭を振った。
「ちゃんと勝ちとってきたけどね。ぱそこん部より400円多いわ。どんなに大変だったか。生徒会長がぱそこん部と結託してるのよ」
一段と怒りの声が上がる。
「“創造性豊かなぱそこん部に比べ、既製品のあにめを鑑賞するにとどまるあにめ部は受動的であり、有意義なクラブ活動とは認めがたい……”と、こうよ。まったく許し難いわ、あの生徒会長。時空の扉の向うに封印してやりたいものね」
「よし!」部長が元気よく立ち上がった。「全部員に使命だ。時空の扉をさがしだすこと」
副部長が真正面から部長を見据えた。
「あなたも時空の扉の向うに行ってらっしゃい。この抜け殻頭、もみがら頭」
美しい声で言われて部長はどん底まで落ち込んだ。
それに背を向けて副部長は全部員に号令した。
「では、ぱそこん部及び生徒会長に報復する、もっとも効果的な方法を討議しましょう。手段不問」
彼女は部長より過激らしい。
そのときだった。
アルミサッシのドアが外から叩かれる。
手近にいた部員がドアを開けてやった。
そこに佇んでいたのは一見何の変哲もない男子生徒。しかしその頭には半分に切ったアームカバーが載っていた。オギワラの如くに。
彼は口を開いた。
「こんにちは、ぱそこん部です。お届け物を持ってきました」
副部長と部員一同が身構えた。