げぇむで吐血(2001年度新歓リレー企画)   第2章 新叉 さすま (2/3)


 うっそうと茂る木。そして辺りかまわず存在するシダ植物。アマゾンと俺の中の何かが呟いた。「きのこの山」という名は大嘘だった。
「お兄ちゃ――ん、はやく、はやく」
 俺は必死で妹を追う。さもないと……
「とろいんじゃ――」
 殴られるのだ。これで百二十三回目。先ほどから食“人”植物やらピラニアやらヒルやらワニやらアナコンダやら、アマゾンによく出没するとされるものが俺の半径1メートル以内を通過しているのだが、今は何よりも妹がこわい。
「なあ、そろそろそのマッシュルームハンティングとは何か教えてくれ」
「人にものを尋ねるとき、はぁ――――ぅ!!」
「お……教えて下さい……」
 何が悲しくて実の妹に対して土下座をせねばならんのか。
「それはねェ……う〜ん……文字どおり★」
 文字どおり。そんな答のために土下座をしたと思うと情けない。そもそも、アマゾンにマッシュルームがあるのか。俺にはわからない。あるとすればショッキングピンクに白い水玉模様のすばらしくメルヘンチックなものの気がするのだが。はっきり言って毒々しいだろうから、食べたくない。
 妹に殴られつつ歩いて一時間は経った、突然。
  ピロリロリロ〜ン♪
 ……俺の携帯電話の着メロが鳴った。妹がにらむ。マナーモードに切り換えるのを忘れていたのだ。
 が、今回は妹のこぶしはとんで来ず、代わりに地震が発生した。携帯の着メロと地殻変動の間の関連性は俺には分からないが、まぁそういうこともあるだろう。ぼ――っと座っていた。すると、山のあちらこちらから小さなきのこが生えてきたのだ。マッシュルームに間違いない。
「あのオヤジー、マナーモードにしろっつーのはきのこを取られない様にするためか。帰ったら半殺し決定!」
 妹が指をポキポキ鳴らせているが、気にしないことにしよう。今はマッシュルーム。何万ものマッシュルームたちはわらわらと俺の前に集合していく。マッシュルームって動いたっけ、とかいうことは、ここでは考えてはいけなさそうだ。とにかくそいつらは集まって……信じられないことだが、合体した。山には大きなマッシュルーム一つ、になったわけである。それは俺の想像していたようなかわいらしい色ではなくて、普通の黄土色をしていた。こっちの方がメルヘンチックな水玉よりもかなり不審だった。しかも、そいつも動くマッシュルームだ。
  ぴよぴよ☆ぴよぴよ☆
 ……鳴いてるよ、これ。
 で。もっと驚いたことにそいつのカサとエの境目がぱっくりと割れて……
  パックン
 近くにいたテナガザルを食った。俺はサァっと血の気がひいていく中、頭を働かせていた。この冒険は確か、妹によると、『まっしゅるーむはんてぃんぐ』。と、いうことは。
「お兄ちゃん、これを取って帰るんだよ♪」
 マジですか? やっぱりそうなんですか?
 俺は何も武器を持たず、妹によりそいつに向かって投げ飛ばされた。こういう時って、怪物だァ――って叫んで逃げるのが普通だろうなど思いつつ。まっしゅるうむはんてぃんぐ=きのこ狩り。その通りだよなー、これは、だなんて客観的思考に浸っているうちに……
  ボヨン。
 俺は怪物まっしゅるうむに突撃した。


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