2000/12/27
サラが逝った。
「待ちきれなかったみたい」
その母の言葉の意味を、僕は取りかねて。というよりも、分かりたくなくて、問い返した。死をはっきり聞かされて。それでも、信じられずに。
サラの小屋に行って、毛布に包まれたサラの体をなでていると、自然に涙があふれてきた。泣いているんだと思った。悲しいとか、かわいそうなどという感慨は無かった。冷たくて、固いサラの体をなでていると、ただ、言いようも無くむなしくて、無性に涙があふれてきた。程なく、母親がきて、僕は、急いで涙をぬぐった。
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十分に生きた
なんて
残されたものの気休めか
死は
いつ訪れても
中断にすぎない
昨日
実希のすりつぶした
スナック菓子を
力なく なめた
その口は
もう、
潤いを失って
昨晩
風呂の中で聞いた
物音は
君の
最期の苦しみだったのか
それとも
寝床の箱から
這い出して
最期に
みなに
別れを告げたかったのか
何もしてやれなかった
だから
せめて忘れない
苦しいけれど
忘れない
この間
部屋に来たばかりのサボテンに
君の
名前をつけて
かわいがります
サラヘ
君は
死ぬまで
少女だった
嗚呼、家族の中で
一番後にきて
一番先に
逝ってしまうのか
決して
君を
忘れたりしない
忘れたりしない
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味のわからない夕食を取っていると、妹が帰ってきて、お念仏が始まった。肩を震わせて、サラの入っているダンボールの箱にしがみつくように泣きじゃくる妹は、痛ましくもあり、そうやって大声で泣けることがうらやましくもあった。
たくさんの想い出をありがとう。
冥福を祈ります。
もう泣かないから、振り返らずにいっていいよ。
――追伸――
2001/08/23
いまでも、時々、家族は君の名を口にします。