「これで最後だ。」
黒ずくめの男はそう言い、火球を放つ。それは見事に核に命中し、核はその瞬間から崩壊を始める。核の崩壊とともに世界の崩壊も始まり、世界はやがてバラバラの破片へと姿を変えていった。
「我が悲願は達成せり。」
私は世界を守ることが出来なかった。
突然、男の顔に驚愕の色が浮かび、それとともに破片がつながり出した。
「世界はまたも私を拒むのか。それとも今度は……。」
世界の破滅に際してのみ使える術がある。と、師匠から聞いたことがある。
世界は救われた。そう思ったその時、視界がぐにゃりと歪んだ。見るもの全てが融けるように歪んでいる。否、全てが溶け出していた。男ももはや土と一体化し、黒い色のみが男の存在を証明していた。だが、そんな色もすぐに混ざって消えてしまうだろう。
どれだけの時が過ぎたのだろうか。私は生きている。目の前に核もある。一体何が起こったのだろうか。
「世界の再構成。私は世界を救ったのに、私は世界から拒まれる。」
「師匠……。」
「だがもう良い。私はこの世界を破壊するだけだ。そこを退くがよい。」
「それは……できませぬ。」
「ならば退かすまで。」
師匠のたった一言の言葉は、私を軽く吹き飛ばした。右手で核をつかみ取り、左手で私の口をこじ開けた。口の中に核が突っ込まれる。そして、師匠が二言三言唱えると私の口中は硬質化し、核を砕くように絞め付け出した。ギシリと音がして核は砕け散った。世界は再び破片になった。
その時、頭の中で囁く声があった。
「ククク、術を授かったのだろう。再生の術だと言って。不利な状況下で、自分に不利な情報を知っているおまえしか頼りに出来ないとは、世界も随分と焦っているようだ。」
「世界を守りたいか。自分の身しか守ろうとしない世界を。他に誰もいない世界を。この世界そのものを。」