夜の公園は人の気配もなく、木々が空をおおいつくしていて薄暗い。ただただ自動車の走る音が響きわたりあたりの静けさをいっそうきわだたせていた。犬のゴールが右の方にある木立を奥へ奥へと進んでいった。だんだん闇の中に消えて行った。あわてて後をおいかけ、木立の中をすすめども、依然としてゴールの行方は分からない。さらにすすんでいくと、もはや月の光すらほとんどとどかないところへきていた。自動車の騒音も聞こえない。とそこでなにか犬の鳴き声のようなものがきこえた。おとのするほうへ木や石にぶつかりながらすすんでいくと、ゴールの悲鳴がきこえた。あわててはしって、ひめいのきこえるほうへすすんでいった。とそこでスッという草の音とともに地面に穴があき体がおちていった。
気がつくと光にあふれたばしょにきていた。茶色いすすけた煉瓦の高い壁がどこまでも続いていた。後ろを振り返ると、市場がひらかれていた。青白い顔をしたもじゃもじゃの毛のおばちゃんたちがひそりと客らしき人とのあいだで野菜やら銅の食器やらをとりひきしていた。言葉はどこのものかけんとうもつかなかった。ざつぜんとしていた。いろいろみつつ中へはいっていくと植物を売る店の人じっとこちらをみていた。ぎょっとしてたじろいでいるとなにかはなしかけてきた。そしてさかんに指をいっていのばしょにさすのでそれをみると一見何の変哲もない小さな観葉植物がめにとまった。目をこらしてながめると、いい形をしたものだった。店のおじさんはその木の枝をおった。そしてこちらのポケットにねじこんだ。とそうこうしていると向こうのほうで悲鳴のようなものがきこえた。と人々は大騒ぎをはじめた。奥の方で火の手があがったのだ。あるものはにげあるものは他の人のいくてをはばむようなこうどうをとり、またあるものはみせの品をこわしはじめた。しかし奇妙なことにひとびとはみないともたのしげな表情をうかべていた。とそこでめがさめた。