(タイトル未定)(リレー企画第5弾D班)   第3章 (仮) (3/3)


そこには一言、「助けて」とあった。
子供の落書きのような地図がつづいていた。
この昨日やったゲームみたいな展開は、さすが夢らしい。
ロマンチックじゃないぞ。
地図の高野病院って何だよ。
などと突然のことに混乱しながら俺の意識は薄れていく…。

「…だったね」
「えっ」
気がつくと目の前には良平がいた。
「いや、いつもながらつまらなかったね、校長の話」

いつもって、まだ入学式以来始めてなのだが。
それに俺の知る限り、面白い校長の話なんて無いぞ。
法律で禁止されてんだ、多分。「面白い校長の話禁止」って。

「そんなものだろ」
とりあえず突っ込みは無しで。
「でも…」
「でも?」
すこし空ろに答える。

「でも、いい話をしてくれた人もいたけどなあ」
「中学校の話なんだけどね…」
もう集会は終わっていたらしく、みな帰途についている。
「…で、なんだかその人の熱意がつたわったというか…」
俺も帰らなきゃ、急にそんな気がした。
誰かに呼ばれたかのように。
「…その院長が高野っていう人なんだけど…」
「えっ」
思わず高野と言う名前に反応してしまった。
「康太、知ってるの」
良平にそう聞かれて、どう答えていいのか分からなかった。


「いや、別に…」
まあ知らないのは本当だし。
でも、何故か気になる。
「誰」
「さっき言っただろ、高野病院の院長だよ」
聞いてなかったの、という顔で答える。
「高野病院ってどこにあるの」
なんて変な質問なんだ。
「えっ…、どこだったかな」
良平はなぜ俺がそんなことを聞くのか分からず少し驚いていた。
「いや、ちょっときいてみただけだ」
「そう、まあいいや。さっさと帰ろうぜ」
「そうだな」

帰りの電車の中。
今日はすいている。
周期的な電車の振動と音に、少しうとうとしてしまう。
また夢をみるのだろうか…。

「康太くん」
あの神社だ、前と同じ。
はっとする。
前、夢で見た女の子が立っている。
たしか、そう、なつこと言ってたかな。
「もう帰らなきゃ」
どこへ?
女の子は境内の裏へと歩いていく。
俺の家はこっちじゃないぞ。
でも俺の足はかってに境内の裏に向かっている。

神社の裏には普通の路地が続いていた。
見たことの無いようで、懐かしいような、そんな通り。
でも、家一つ一つは、ぼやけて見えたり、積み木のようにいいかげんな形だったりする。
あの家なんて、三角錐だし。
夢って適当なんだ、そう思われた。
ふと、その町並みが急に怖く思われた。
迷路のようにはいったら戻れないのではないかと。
「はやく、康太くん」
女の子が呼んでる。
走り出していた。女の子と逆方向に。
「康太くん!」
なぜか必死だった声を聞きながら俺は目覚める。

汗でぬれている顔を拭きながら、俺は電車を降りた。


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