うぉ〜ず
おたく戦争
(不審部6人リレー)   第5章 新叉 さすま(5/6)


 僕にはわからない。アニメ部では僕なんて下っ端オタクだし。ただ1つわかるのは、なんかやばいぞって事。そしてあにめ部がぱそこん部に負けるのは必至って事だ。オギワラはにやにやと笑ってるし。うわーやな奴。でも、いいや。そもそも僕がアニメ部に入ったのは1つの目的の為だけーー会計の為だ。部費払う為って意味ぢゃないよ。会計さんとお近づきになる為って事。
 僕は決心し、ネタ合戦を喜々として眺めている会計の手を取り、部室の端のカーテンで隔てられた場所へ向かった。ここにはあにめ部専用飛行機がおいてあるのだ。その名も「蒼の氷」。カーテンを引くと、名前にふさわしく鋭いフォルムをしたセルリアンブルーの機体が現れた。
 僕はまだネタ合戦の観戦に夢中の会計を後ろに乗せ、「蒼の氷」の操縦席に座った。
 ヴォヴォヴォヴォ…
 エンジン音に副部長が気づく。
「何ィ!?」
止められる、と思い、僕は飛んだ。逃げるが勝ちだ。
「お、お前、それは…」副部長が叫ぶ。が。
「君の瞳にラブ・ビーム!」
部長の声にかき消された。まだスーツ女と戦っているようだ。それは、何、と言いたかったのか少し気になっていると、会計が呟いた。
「これは、不良品……」
これ?これって、この飛行機っすか?え、マジ?ていうかね、そーゆー事は乗った時に言ってほしかったぞ会計。
 専用機は煙を上げはじめ、カーブがままならなくなりはじめた。やばい。このままいくと即死か。僕の人生終了。もういいや。
「♪どうなってるの〜」
ついついエンディングテーマを口ずさんでみたりして。あれ?そういえばなんであのアームカバー野郎はオギワラと同じ格好なんだろう。あのアニメはかなりコアな、アニメオタクしか知らないはずだ。僕は部内での話の都合で見てるけど。それをこんぴうたおたくが知ってるとはどうも不思議…。
 ここまで考えているうちに、地面が近くなってきた。死ぬ!死ぬ前にせめて今抱いた疑問は伝えたい。だっておかしいよ。副部長って、紅の結界とか知ってたし、しかもうめいているだけで戦ってないんだ!
 その時だった。
「栄冠めざしてー!!」
 なんと会計が身を乗り出してハンドルを握ったのだ。彼女は怪力らしく、僕が使ってもびくともしなくなっていたハンドルは動いた。どうでもいいけど栄冠ってオタクの栄冠なのかな。
「副部長がスパイよ」会計は呟く。
「僕も思うよ」あ、なんか2人いい感じ?
「伏せて!」へ?とりあえず従って、僕は伏せた。
  ガシャーーーーーーーーーンッ!!!
つ…追突事故…?違う、これは会計が計画的にぶつかったものだ。そして、この教室は…
「K号館19番教室…」
見るも無惨な教室で、こんぴうたおたく達は泣いていた。全ての機材がぶっこわれたようだ。あにめ部勝利、かな。ちょっとかわいそうだけど。
「次は副部長をとっちめる!」
会計の性格は変わっていた。が、かわいいことに変わりはない。今だ、今しかない!
 告白しようとした僕の雰囲気を察してか、ゆっくりと会計が振り向く。髪がふわり、と揺れ、にっこり微笑んで…
「ごめんなさい、実は私、男なのよ☆」
 そして彼女はもう一度ハンドルに手をかけた。


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